Regional Scrum Gathering Tokyo 2019に参加しました
はじめに
初参加です。参加者同士の交流色が強い、活気あるイベントでした。
聞いてきた話と個人的なメモ
Outcome Delivery: delivering what matters
「最高のコーヒー」と聞かれると豆や入れ方、カップや砂糖などコーヒーのことだけを考えてしまうが、「素晴らしいコーヒー体験」を問われると誰と飲むか、どこで飲むかなど人それぞれ違った視点が生まれてきます。 「開発する」ことを考えると短時間でたくさんの成果を作り出すことに頭が向いてしまいますが、その前に「なぜ」それが必要なのかをよく考えてみましょうという話でした。
「なぜ」を繰り返すところはトヨタ自動車の「なぜなぜ5回」に似ていると感じました。リーン由来で何か影響を受けているのかもしれません。
Coaching resilient Scrum teams
プロジェクトに関わるたくさんの人を「作業グループ」から「チーム」に変え、さらにアジャイルに動けるようにするため、コーチとして行なったことを紹介されていました。
コンテキスト別にチームをマッピングし、効果が出やすく全体への影響が大きいところからコーチとしてサポートしていったとのこと。
チームごとに改善の取り組みを可視化するためにマインドマップを作っていたのが面白かったです。「最近は何の改善を検討してたんだっけ」というのは忘れてしまいがちなので俯瞰図を作ってマメに更新するのは良いと思います。
運用中のモバイルゲーム開発チームに、並行バージョン開発を導入してみた
ゲームづくりの難しさ、Apple/Googleのプラットフォームに載っているため配信が自分たちでコントロールできない難しさ、評価の難しさなど色々悩んだ末にどうチームを分割して成果が出るように考えたかというお話でした。背景がわからないとどうしてバージョン別チームを作ったのか腹落ちできませんが、20分枠だとそこの説明に時間を使ってしまって説明が難しそうだなと感じました。
講演後に「2チームで同一バージョンを半分の期間で作ってはどうか」と話をしましたが、「ゲームは組み合わせ評価が難しく、QA期間が短縮できないからそこがボトルネックになってしまう」と聞いて腹落ちしました。でも「評価をもっと短く終える手段はないのか」と考えると次の段階が見えてくるような気がします。
スクラムチームを辞めて20人でカンバン運用してきた半年間の軌跡
20分枠なのにスライド150枚の対策でした。 クロスファンクショナルチームを組んでいたが、評価が難しく、職能別チーム(バックエンド・フロントエンド)に組み直した。そしてチーム同士の連携を強化するためカンバン開発に移行し、カンバンもなんども作り直してようやく良さそうなカンバンにたどり着いたというお話でした。カンバンの改善事例はあまりみないのでその点で面白い発表だったと思います。
一方で本当の問題は「評価をどうするか」であって、クロスファンクショナルチームを止めるほどのことだったのかが気になりました。話を聞けなかったので憶測ですが、真因は「給与が評価と連動しており、エンジニアの納得感を得ることが難しい」のような気がします。最近読んだNetflixの本では「給与と評価を連動させるな」と言っていました。
東名阪をまたいだLeSS Huge(大規模スクラム)においてスクラムマスターとして実践したこと
www.slideshare.net
東京・名古屋・大阪の3拠点でLeSS Hugeをやった取り組み紹介でした。「LeSSみなさんご存知ですよね」といった体で話が進んでいきましたが、本当に認知度あるのでしょうか? 結局いろいろあって、発表時点ではLeSSをやめてしまったようです。一気にHugeを始めてしまったのがよくなかったんじゃないかと思います。
ちゃんとやってるのになんかうまくいかないスクラムからの脱出
スクラムの基本を、スクラムという言葉を使わずに、1歩ずつチームを導く優しいコーチのお話でした。 「スクラムを基本通りやれ」って言ってはダメですかねというお話を後でしましたが、「いきなりたくさんのことはできないから」と返答いただきました。コーチの余力がある場合にはとても良いやり方だと思います。
エンジニア採用もカンバン使ってみたら、「透明性」によって採用が活動が変わったこと / Agile Recruiting
唯一の「開発」でないアジャイル事例だったのではないかと思います。 ほとんどエンジニアしかいない会場ではなく、違う場であればもっと引きがあってもおかしくない事例紹介だと思いました。
スクラムならできる プロダクトバックログの戦略
www.slideshare.net
スクラムコーチが事業会社のIT部門部長として転職し、社内の信頼感を得て、組織を立て直していく泥臭いお話でした。 タイトルももっと泥臭くつけた方が話を聞きにくる人を惹きつけられたんじゃないかと思います。 スクラムをうまく社内に根付かせることができた人にとっては「あるある」話だったと思います。泥臭い経験の共有は貴重です。
Learning to Experiment
モブプログラミングを考案したHunter Industries社のChris Lucian氏の公演でした。 流行しているモブプログラミングですが、突然ひらめいでできたものではなく、さまざまな実験を大小繰り返し、失敗を学びながら生まれたものだとわかりました。 LeSSでも「実験が大事」だと話していて、根っこは一緒なのかなと思います。
心に残る言葉が多いセッションでもありました。
- 失敗するリスクが高い実験こそが学習を最大化する
- 学習する時間を定期的に用意する
- いいプラクティスを広げるには透明性、結果、一貫性が重要
- チームに「最近何を実験しているか」を聞く。
喧嘩できるチームを作るワークショップ
振る舞いは観測できるけど、何を考えているかは見えない。でも考えの元となる価値観・常識・正しいと考えていることは人それぞれ違っていて、それを形作るのは文化・風土・空気である。でも文化や空気も実は個人の経験や学習によって少しずつ作られるもので価値観も変わるので、対話を観察し、フィードバックすることで良い文化、チームの器を作っていこう・・・というワークショップだったと思います。抽象的な話も多く正しく受け止められたのか自身がありません。
「場を取り繕おうとする”安全”」ではなく「そもそも論が言える”安心”」な空気を作ることが大事だとワークを行なったチームで話してこれが一番すっときました。
ワークショップの途中で議論の内容を他の方にみていただく機会があったのですが、やり取りを第3者からみてもらってフィードバックしてもらうのはヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法でも1on1を訓練するやり方として紹介されており、少し似ているなと感じました。
明日現場で使える!とにかく明るいScrum Patterns 活用ワークショップ
とにかく明るかったです。
自分たちが普段使っているプラクティスを解きほぐし、どういう時に使えるものなのか、それが本当にベストなのか、考えるきっかけとするのに面白いワークショップでした。まだできたてのようなので、今後さらに良くなっていくと思います。
よなよなエール流 熱狂を生むチームづくり ~8年連続赤字から13年連続増収増益までの軌跡~
今回聞いてきた中で一番面白いお話でした。
- 競合が少ない道を選び、真似できないほど徹底的に差別化する。これを繰り返し行う。
- チームを育てる。中心となる人の立候補を待ち、チームビルディングをきちんと学ぶ。
- コミュニケーションは意図的にとる場を作る。「大人数⇄少人数」と「質⇄量」の軸でマップを作り、マップの全域がカバーされるように社内イベントを配置する。
本もいただけたので時間を作って読みます。私はヤッホーブルーイングのファンになってしまいました。
- 作者: 井手直行
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2016/04/08
- メディア: 単行本
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素直な感想
自分のチームはかなりうまくアジャイル開発/スクラム開発できている部類だなと感じました。おそらく中の上か、上の下ぐらい。 ただHunter Industriesの事例など上には上があるので日々実験を繰り返してまだまだよくする余地はあるのだなと思いました。
この点が改善されるともっと良いのに
と思った点です。
- 持ち帰り荷物が多い
- 20分の発表枠がきつそう
- 背景の説明で10分ぐらい使わされている例が多かったです。休憩時間を短くして30分枠にしてもよいのでは?
- 質疑応答の時間がない
- 20分枠を20分話すとQ&Aができません。5分ぐらいはQ&Aに時間を割くか、またはフィードバックを貼り付ける紙を壁に用意してもよいのでは?
- 同時通訳聞きにくい
- 会場中に英語のスピーチが鳴り響き、レシーバーから日本語が流れてきます。どっちも大きい音で入ってくるので英語が少しでもわかると体が聞こうとしてしまって辛いです。
- レシーバーをつけないで英語で聞くことにしても隣の人・会場中のレシーバーの音漏れが大きくて結局聞こえてしまうという話も聞きました。同時通訳があるイベントはこういうものなのかもしれませんが、もっといいやり方ないですかね。レシーバーがイヤホンのように音漏れしにくいものに変わるとか。
- ネットワークパーティーのタイミング
- Confengineがスマホで読みづらい。
- ノートPCを会場に持ち込んでいないとスマホで確認することになりますが、レイアウトが詰められて大変読みにくいです。
- スケジュールは急遽変更することが無いようなので、会場の壁に貼ってあっても良いのではと思いました。