Failed #SquadGoals を読んで
はじめに
Spotifyモデルに反論する下記記事を読んで、いろいろと考えさせられるところがあり、記事の概要・考えたこと・守田さん(@wsfjp)・藤村さん(@aratafuji)と議論した内容をまとめました。
Spotifyモデルと本記事の概要
「Spotifyモデル」は2013年頃のSpotify社の開発体制を指して使われる用語です。 Squads / Tribe / Guildなど特徴のある呼び名でグルーピングを行ったマトリクス型組織であり、各チーム(Squads)に強い自律性を持たせたことが特徴です。
- Spotifyモデル - tuneの日記
- Spotifyのスケーリングアジャイル – 部隊、分隊、支部やギルドと共に歩む | 『リーン開発の現場』越境せよ!
- Competing With Unicornsを読んだ | SOTA
Spotifyモデルはアジャイル開発のスケーリング事例・フレームワークとして一定の支持を集めていました。
本記事はそんなSpotifyモデルが機能しないとJeremiah Lee氏が主張したものです。 記事では2017年にSpotifyに入社したとありますが、著者のLinkedInを見るに2018年4月にはInVision社へ移っているので1年弱の体験に基づくものと思われます。
整理すると下記の課題を主張しています。
- マトリクス組織の問題(Matrix management solved the wrong problem)
- エンジニアは機能軸で切られたチーム(Squads)に所属するが、職能軸で切られたChapterにも所属し、Engineering Managerの元管理される。
- 機能軸の責任者であるProduct Managerは技術課題の解決のため複数のEngineering Managerと調整が必要。
- チーム自律性に重きを置きすぎた(It fixated on team autonomy)
- 「チームが好きなことをできる」を自律と勘違いしてしまう。製品価値・説明責任よりも自律の優先順位が優ってしまう。
- チーム単位でのコミュニケーションプロセスの不在(Collaboration was an assumed competency)
- Spotifyモデルが有名になりすぎた事で変えることが難しくなった(Mythology became difficult to change)
疑問に思ったこと / 議論して腹落ちしたこと
Spotifyモデルの根本的な問題なのか、組織の運用の問題なのか
半々かもしれない。 プロセスに関する健全な批判があるのは、まだ機能している証拠とも言える。 一方でSpotifyモデルを運用する上で課題になりそうな点がやはり指摘されており、単にコピーすればうまくいくものではなく、自分の組織に合わせて常に考え続けなければ使い物にならなそう。
- Tribeの切り方→間違えると組織間でボールのお見合いが簡単に発生する
- チームの自律性の担保、組織目標とどう合わせていくか→[Spotify Rhythm - Spotifyはどのように開発方針を揃えているのか - tuneの日記
Engineering Managerの権限が弱すぎる問題なのでは
Engineering Managerがエンジニアに関与する権限を強くしたり、序列をつけたりして技術的に揉めたときの決定プロセスを明確にすれば良いかと思ったが、そもそもマトリクス型組織は長続きしないといわれてそうかもと思いました。
マトリクス型組織は縦軸(機能軸)か横軸(職能軸)か、その時に仕事が進めやすい一方に自然と寄ってしまい、形が崩れてしまうものなのかもしれません。 この記事の指摘はSpotifyでマトリクス型組織の形が崩れても、戻すことも止めることもできないことから上がった問題点のように感じます。
この記事から何を学ぶべきか
Spotifyモデルがバズり、広く知られた結果、これを根本から見直すことがSpotifyの中でやりにくくなってしまったことを「Mythology became difficult to change」は指しているかもしれません。 アジャイルな開発では小さく実験を繰り返し、うまく行った少しのことを大事に育てていく方がよいとされていますが、確かにSpotifyモデルは出自が明示されていません。試行錯誤の結果生まれたものではなく、誰かが意図して入念に設計したものなのかもしれません。これはHenrik Kniberg氏に聞いてみないとわからないことですが。
その他
そんな筆者はどんな開発プロセスにすべきと考えているかというとSAFe推しのようです。Fitbitでうまう行ったとなっていますが、強いトップダウンでの開発が好きなのかもしれません。強い自律性を第一とするSpotifyモデルとは対極です。
More than 200 people in your product—engineering—design organization? The Scaled Agile Framework worked well for Fitbit when I worked there.
またSpotifyモデルを世に出したHenrik Knibergはどうしているのだろう・・・と思ったらもうSpotifyにいないそうです。 Minecraftを開発するMojang社に2019年3月に転職していました。