tuneの日記

アジャイル開発、組織変革、マネージメント、ファシリテーションについて学んだことの記録

心理的安全性をもたらすには

この記事はEngineering Manager Advent Calendar 2021 4日目の記事です。

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心理的安全性という言葉が一般的になり、その重要性も、誤解(心理的安全性=ぬるま湯とか)も、訂正(心理的安全性は当人が決めるもの)も広まった状況かと思います。

心理的安全性を扱った記事はたくさん見かけるものの、「心理的安全性を高めるに具体的にどう行動したら良いのか?」という疑問に正面から答えた事例は少ないように感じます。ということで自分が普段行なっている行動や背景にある考えを紹介します。

ただ話す

チーム間の調整にもっとも良い方法は単純に、ただチーム間の調整をすることです。課題があれば自己管理されたチームの誰もが他チームの所に行って議論することが期待されています。もし、「ただ話す」ことが出来ない状況なのであれば、電話したり、最悪の場合にはメールを送れば良いわけです。調整の為に形式張った場は不要で、調整が遅れるだけです。立ち上がって話に行ってください。

これは大規模スクラムフレームワークの一つ、LeSSで紹介されているプラクティスの1つです。 何か相談しないといけない時にマネージャーやリーダーに相談したり、定例会議を設けたり、調整役を設定したりすることをよくしますが、LeSSでは調整が必要になった時にただ立ち上がって相手のところに行き話すことを推奨しています。

チーム同士で調整が必要な項目はマネージャーを介さず話してもらっていますし、チームに対してのもやもやを相談された時は直接当人に伝えてみてはと話しています。マネージャーが間に入った方がうまくいくケースは少ないですからね

調整と統合 - Large Scale Scrum (LeSS)

"誰"の話をしているのかを明確にする。

「チームに言いずらい」という悩み相談を1on1で聞くことがありますが、その時は「言いづらい相手はAさんのことですか? それともBさん? それともCさんのことですか?」と名指しで聞くようにしています。1人1人の顔を思い出して考えてもらうと個別の人に言いづらいということはほとんどなく、大抵はチームや組織といったボヤッとした対象に対してなんとなく受け入れられないんじゃないかという不安感を抱いているケースがほとんどです。

対象をぼやかして話すと、さも抽象度の高い難問に取り組んでいる感じが出てしまうので、具体的に掘り下げてみましょう。 似たような話ですが「組織は話さない」というブログ記事が切れ味鋭くて好きです。

組織は話さないですよ|qsona|note

個人の問題ではなくプロセスの問題として扱う

「ただ話す」を実施してもらい、「誰の話か明確」にしても解決しない問題はあります。 1個人の望ましくない振る舞いが槍玉に挙げられることは少なくありませんが、この手の問題は「個人のコミュニケーションの問題」としてしまいがちです。 ですが一緒に働くメンバーを信じるならば、これは個人の問題ではなく「問題を生み出す背景プロセスの問題」なのではないでしょうか。

プロセスの問題を炙り出すには事例を複数集めて共通する背景要因を時間をかけて考える工数が発生しますが、個人の問題として安易に断じない姿勢をとり続けることで、問題をエスカレーションしても正しく議論されるという安心感が醸成できるのではないかと考えます。

聞きにくいことを率先して聞く

皆にしてほしい振る舞いを率先して行い、背中で見せることはよくあると思います。 私は言葉足らずだなと感じた説明があったら、意図を明確にするためにあえて聞くことを意図的に行なっています。

例えばあるルールが「"従業員"を対象に実施」と説明された場合、正社員の自分が対象者に含まれることは自明ですが、アルバイト・業務委託・インターン契約社員のメンバーは悩むかもしれません。こんな時は「従業員にアルバイト・業務委託・インターン契約社員は含まれますか?」とSlackチャンネルでオープンに聞いたりします。「マネージャーなので質問しやすいんでしょう」と思われているかもしれませんが、投稿する時はドキドキしています。役職者になってもそんなものです。

心理的安全性があるかのように振る舞う

心理的安全性の話が出るといつも引用してくる好きなスライドです。 マネージャーだからドキドキしても聞きにくいことを聞く、マネージャーだからメンバーを信じてプロセスの問題を探す、マネージャーだから皆が自律的に動けると信じて後ろで見守る。皆も同じような振る舞いを続けて自信がついてきた結果の先に心理的に安全な職場が実現できる。私はそう考えています。

おわりに

心理的安全かどうかは各々が感じる・決める話ではありますが、2021年夏に勉強会を開催した際に「今の会社は心理的に安全か?」とファイブフィンガー (指1本:安全でない〜指5本安全である)で回答してもらったことがありました。私は指4本を出しましたが他のメンバーは指5本出していたので、そこそこ安全な職場が作れているのだと考えています。

そんなエンジニアリングマネージャーが考えていることの紹介でした。