「ユニコーン企業のひみつ」を読んで考えたこと

ユニコーン企業のひみつ ―Spotifyで学んだソフトウェアづくりと働き方
- 作者:Jonathan Rasmusson
- 発売日: 2021/04/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
「ユニコーン企業のひみつ」を読みました。 きちんとした書評は会社のTech Blogで公開予定のため、ここでは個人的に感じたこと・考えたことを書き留めておきます。
どこから手をつけるのが良いのか
書籍だと変わった後の姿の紹介しかないため、自分の会社で同じように変えていこうとなるとどこから取り組むべきかに悩みそうです。 自分がやるなら「自律する開発チームを作る→自律する開発チームを増やす→目標を徐々に揃える」かと思いました。 自社の開発プロセス改善もそう言えばこの順でした。 Spotifyモデル(2013年)・Spotifyリズム(2016年)の公開時期を踏まえると、Spotifyもこの順のように思えます。
自律したチームはどこまでやるべきか
書籍では決められた手順通り開発するチームを「野菜切り」と比喩していますが、真に自律したチームはいったいどこまで出来るのでしょう?
自己組織化チームとは何か?で紹介されている「自己管理型チーム(タスクの実行、進捗管理)」かなと思っているのですが、書籍を読んでいると「自己設計型チーム(チームのデザイン、チームが運営される組織面の変更)」かそれ以上を求めているのかなと感じました。でも書籍の中ではプロダクトオーナー(PO)・テックリード(TL)・アジャイルコーチ(AC)から構成されるPOTLACなるチームが言及されているので、組織面の変更権限はこっちにあるような気がするんですよね。 だとするとチームの自律の範疇はフランチャイズオーナーの店舗運営ぐらいなのかなーとか思ったり。
「自律してね」チームに伝えると、多くのケースで何でもかんでもやろうとして動きが悪くなるので、書籍に出てくる下記の期待値表現は短くて今後使っていこうと思いました。
自律せよ、だが局所最適に陥るな。
イテレーションはプロダクトを試行錯誤して磨いていくこと
書籍の序盤に出てくる表現。iPhoneを思わせる挿絵があるけど、「Appleだって最初からiPhone12を発売できたわけではないでしょ」という説明は良さそう。 同じ対象を何度も何度も改善しながら作り直すことが大事なんですよというメッセージは伝えていきたい。 ただブラッシュアップとか違う用語がいいかなと思いました。 イテレーションは開発サイクルそのものを指して使われるケースが多い気がして、新たな意味を持たせるには広まりすぎたと思います。
課金コードは何番?
うけた
でもこれがうける人は過去にこの体験に触れた経験があるということで・・・
インハウスのアジャイルコーチがマネジメントチームの一翼を担う
プロダクトオーナー(PO)・テックリード(TL)・アジャイルコーチ(AC)から構成されるPOTLACというマネジメントチームが紹介されていますが、国内の企業でインハウスのアジャイルコーチがいて、その人にマネジメントチームに入ってもらう事例は聞いたことがありません。アジャイルコーチは外部からスポットで招聘していたり、アジャイルコーチが社内にいてもマネジメントチームの一員ではないと思うんですよね。うちはこれできているよという会社があったら話を聞いてみたいです。
日本のアジャイル実践者は外部コーチが多い気がするので「Spotifyではインハウスでアジャイルコーチを雇い、マネジメントチームに参加させている。日本もこうやっていくべき!」みたいな啓蒙活動するといいんじゃないかな。(適当)
Spotifyは合意形成の文化である。
ヤンテの掟に言及されているのが良かったです。Spotifyの開発文化はこれに根ざして形作られた「合意形成を重視する文化」だと考えるとしっくりきます。
- 自分がひとかどの人物であると思ってはいけない
- 自分が我々と同等であると思ってはいけない
- 自分が我々より賢明と思ってはいけない
- 自分が我々より優れているという想像を起こしてはいけない
- 自分が我々より多くを知っていると思ってはいけない
- 自分が我々を超える者であると思ってはいけない
- 自分が何事かをなすに値すると思ってはいけない
- 我々を笑ってはいけない
- 誰かが自分のことを顧みてくれると思ってはいけない
- 我々に何かを教えることができると思ってはいけない
ロードマネージャーの負担が大変そう
スクラムを発展させたLeSSだとスプリントのタイミングで全チームの方向性・リズムが強制的に揃うけど、Spotifyモデルだとカンパニーベットの遂行に責任を持つロードマネージャーの負担が凄そう。
というか彼/彼女らは本書で批判している"プロジェクト"マネージャーなのではないか?
Spotifyへの憧れ
そういえば2年前に転職活動をしていたときに、Spotifyを受けてみようかと考えていたくらいには憧れていたことを思い出しました。 当時は東京の募集がなく(今もオープンのポジション無いようです)、フルリモートもなかったことで調べただけで終わってしまいましたが。
Spotifyへの憧れはSpotifyモデルを公開した、Henrik Kniberg氏由来で、彼を自分のキャリアのロールモデルとしておいています。 今はMojang(マインクラフトの開発元)にいるそうですが、きっといろんな実験をしているんだろうな。