tuneの日記

アジャイル開発、組織変革、マネージメント、ファシリテーションについて学んだことの記録

「スクラムの拡張による組織づくり」を読んで #だいすくらむ本

著者の粕谷さんから献本を頂戴しました。この記事を公開した2023年8月22日時点では発売されておらず、2023年8月26日発売予定です。

こんな書籍です

スクラムのスケーリング手法の1つであるScrum@Scaleについて、粕谷さんがChatwork社で取り組んだ経験・得られた知見を盛り込み書かれた書籍です。スクラムのスケーリング手法はLeSS(Large Scale Scrum)やSAFeがありますが、Scrum@Scaleは公式ガイド認定研修以外であまり知ることができず、私もドキュメントには目を通したことがあるものの、どういう場面で向いているのかとかどう導入したら良いのかはさっぱりわからない状態でした。本書ではスクラムのスケーリングに向き合う覚悟から、スクラムの基本的なおさらい、Scrum@Scaleそのもの、具体的な導入の進め方まで触れられており、Scrum@Scaleに興味を持った人・導入推進を考えている人にオススメの1冊です。

ここが好き

全7章から構成される書籍ですが、私は1章と3章が特にお気に入りです。

1章はスクラムのスケーリングについて扱っています。スクラムのスケーリングは「やってはダメだ」とよく言われますが、なぜダメなのか、どういう時にスケーリングせざるを得ないのか、その時の前提条件や気をつけるポイントがどこか というのは熟達したアジャイルコーチやスクラムマスター、何らかのスクラムスケーリングフレームワークを導入し難しさを経験した人に話を聞くしか無い状態でした。本書は書籍の最初の1章できちんと落とし穴を説明してくれています。最終的にScrum@Scaleを採用するかどうかに関わらず、スクラムのスケーリングを考えている方にはこの1章を読むだけで価値があります。

また3章は架空のゲーム開発を題材として、Scrum@Scaleでの開発の流れが紹介されています。Scrum@Scaleではスクラムチームの代表者によるメタスクラムやそれに伴う追加のスクラムイベントが定義されていますが、どのイベントでどのような粒度のことを話すのかについてはガイドでは触れられていません。この章を読むことで各種イベントで扱うことが具体的に想起でき、書籍の後半で紹介される事項の理解にも役立ちます。早い段階でScrum@Scaleでの開発が追体験できるコンテンツが用意されているのは書籍構成の良いところだと思います。

こんな方におすすめ

  • スクラムのスケーリングに興味がある
  • スクラムのスケーリングを推進する立場にある
  • Scrum@Scaleの導入を検討している・推進している

これまでスクラムのスケーリングを考える場合、ネットで情報を探し、LeSSやScrum@Scaleを知り、公式感(Scrum Inc.)に心惹かれるものの、Scrum@Scaleの有償研修に参加するまでは踏ん切りがつかず、悩む人がそれなりにいたのでは無いかと思います。これからはこの書籍でScrum@Scaleをより深く理解し、その上で自信を持ってScrum@Scaleの有償研修に参加し、自組織で推進する際に悩みにぶつかったらこの書籍の6章(現場へどのように導入していくか)および7章(Chatworkへの導入事例の紹介)を参考により深く課題に向き合える、そんな書籍に仕上がっているかと思います。